通販広告自習室
通販広告自習室
いまの広告の傾向は、どうなんだろう。
これからの広告は、どっちを向いていくんだろう。
そんな大きなテーマを念頭に置きながら、連日新聞に折り込まれてくる流通関係のチラシ、中でも通信販売のチラシをじっくりと見てみました。
ものを売る。それ自体非常に難しくなっている理由として、想定ターゲットは見えていても、そのお客さまをどう探したらいいのかが分からない、という声をよく聞きます。逆に言えば、お客さま自身に飛び込んできていただける入口があれば、もっと売ることが出来る、業績を伸ばせる。そんな、超優秀営業マンの代わりになる方法の一つに、通販チラシがあると目を付けました。どうすればお客さまを購入まで誘導できるのか、CPI(一人の見込み客を見つけるために必要な経費/Cost Per Inquiry)、CPO(一つの注文を得るまでの販売コスト/Cost Per Order)を抑えながら、最大の効果を発揮するためにはどうすればいいのか。費用対効果をさらに高めるチラシのヒントを、実際のチラシを例に挙げながら探っていきたいと思います。
通販広告自習室Vol.4
通販では、モノやサービスを
体験出来ない、試せない。
そのデメリット、解決方法があります
モノに触れることなく、試すことなく通販で購入。
何を頼りにしているのだろう。
通販の良さ、それはいつでも、どこにいてもショッピングができる便利さ。手間がかからないし、店員さんとのやりとりが面倒な方にはうってつけ。挙げれば両手では足りないほど出てきます。日本通信販売協会が2011年に発表したデータによると、2010年度の通信販売市場は前期比8.4%増の4兆6,700億円。2001年と比べたらなんと88%も伸びています。特にテレビ通販企業の売上高、B to B向けの通販事業の好調さが際だっています。また、2010年には経済産業省が「消費者向け電子商取引事態調査」というものを行いました。ネットを活用した通販のデータですが、その中で売上が多かった品目を見てみると、「旅行」が1位で8,945億円、2位が「衣料品・アクセサリー」で3,379億円、「家電品・PC」が3位で3,230億円と続いています。この場合の「旅行」とは、出張や旅行でよく使うホテルなどの宿泊予約がかなりの売上を占めていると思われます。
他の人の声が、良し悪しを教えてくれる。
そんなレビューが購入するか否かのモノサシに。
では、通販でショッピングする場合に都合が悪いことを挙げてみると、「試すことが出来ない!」この一点に絞られます。試食ができない。試着ができない。モノやサービスが目の前にないのですから当たり前のことです。では人々はどのようにしてこれをクリアし、モノやサービスを通販で購入しているのでしょうか。ヒントはネットのホテル予約サイトにあります。例えば同じくらいの宿泊代で、2つのホテルのシングルが空いていたとします。一方は繁華街の真ん中に最近出来たホテルで、夜は何かと楽しそう。ただし最寄り駅まで徒歩10分です。もう一方はビジネス街にある老舗ホテルで、地下鉄駅上。朝食も充実していそう。さて、文字と写真の情報だけで、どちらを選ぶか。頼りになるのはレビューです。きちんと和訳すると「評論」。ホテルの場合は、実際にホテルに宿泊した方の声ですね。部屋の様子や備品の質、食事の内容や接客態度、ロケーションなどあらゆることに関して、良い悪いがハッキリ書かれています。
レビューの特徴は、何より事実であることです。WEBであれ、チラシであれ、テレビであれ、広告の主語は発信者、つまり広告主です。商品やサービスを広告するとなると、自分で自分を褒めるという構図になるのです。ところが、レビューは広告主と利害関係のない人々が客観的に事実を伝えた情報です。読み手はどちらを信頼するでしょうか──。
試してみなければ良さはわからない。だったら、ユーザーの声で良さを伝えてもらおう。
ここに、お客様の声を多用したチラシがあります。広告している商品は、一粒食べたら薔薇の香りが身体から漂うというサプリ「薔薇の囁き」。広告主は「DMJえがお生活」です。2,600本の花から1ccしかとれないというブルガリア産のダマスクローズオイル、マッシュルームから抽出した健康成分のシャンピオン、美容にうれしいグレープシードオイルが含まれている錠剤を食べるとなぜ身体から薔薇の芳香が漂うのか、今ひとつわかりません。本当にそうなるのか、これだけの情報では信じられないところもあるのではないでしょうか。そこで、「DMJえがお生活」がとった戦略は、愛用者の声で商品特性を伝えようというものです。しかも、女優の横山めぐみさんを愛用者の1人として登場させ、タレント広告としての要素もプラスしています。愛用者の声は表面だけで10名。裏面も合わせるとなんと21名もの人々が食べた感想、効果、評価などを語っています。例えば、46歳の女性は「口臭を気にせず、会話に自信が持てるようになった」とその効果を淡々と語っています。28歳の女性は「香水いらずで良い香り」と、友人からの評価も交えながら、うれしそうにメリットを語っています。もちろん、横山めぐみさんも女優として、美しい女性として、その効果を多くの言葉で語っています。
ユーザーの声が試供品のかわりになる。ベテラン営業マンの役割を果たす。
愛用者の声、これを「事実の証」と言い替えると、この「薔薇の囁き」のチラシは商品の特性を一人ひとりが体験した事実で裏付ける「事実の証の広告」、略して「実証広告」です。口臭というコンプレックスを持っている人に対しては、それが改善した事例を伝え、おしゃれを楽しみたい人に対しては、控えめに香るセンスの良さを伝え、一人ひとりの信頼を勝ち取っていきます。もちろん、実際の商品を試すことが出来たら、他人ではなく自分がこの商品の良さを体験出来ます。しかし、通販でモノやサービスを実際に手に出来ない場合、「事実の証」が一生懸命に試供品やサンプルの代わりをしてくれるのです。また、B to Bの広告であれば、時としてベテラン営業マンの代わりをしてくれます。最近新聞広告で良く目にするのが、タブレット端末を導入してビジネスを展開しはじめた企業の様子を、製品を提供したメーカーの広告として掲載するもの。流通関係の企業で効果が出ているのなら、当然ライバルの流通企業も黙ってはいられないはずで、ユーザーの言葉や写真が掲載されていれば、営業マンが自画自賛するより高い効果が望めそうです。
褒めすぎは逆効果。あくまでも真実をしっかり伝えることが信用度を高める。
今まで語ってきたことを振り返ると、実証広告はサンプルやベテラン営業マンのかわりを務める非常に優秀な手法であることがお分かりいただけたと思います。が、たった一つだけ、これを守らなかったら元も子もなくなってしまうポイントがあります。それは、ウソを書かないこと!いくら良い商品だからといって褒めすぎても読み手は引いてしまうし、逆効果になってしまいます。実証広告という手法自体の信頼性も危うくなってしまいます。では、いかに真実を語り、効果的に読み手の心を動かせるか。もし企業の宣伝担当の方がこの原稿をお読みになっていれば必ず出そうな質問には、次回しっかりお応えしましょう。