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いまの広告の傾向は、どうなんだろう。
これからの広告は、どっちを向いていくんだろう。

そんな大きなテーマを念頭に置きながら、連日新聞に折り込まれてくる流通関係のチラシ、中でも通信販売のチラシをじっくりと見てみました。
ものを売る。それ自体非常に難しくなっている理由として、想定ターゲットは見えていても、そのお客さまをどう探したらいいのかが分からない、という声をよく聞きます。逆に言えば、お客さま自身に飛び込んできていただける入口があれば、もっと売ることが出来る、業績を伸ばせる。そんな、超優秀営業マンの代わりになる方法の一つに、通販チラシがあると目を付けました。どうすればお客さまを購入まで誘導できるのか、CPI(一人の見込み客を見つけるために必要な経費/Cost Per Inquiry)、CPO(一つの注文を得るまでの販売コスト/Cost Per Order)を抑えながら、最大の効果を発揮するためにはどうすればいいのか。費用対効果をさらに高めるチラシのヒントを、実際のチラシを例に挙げながら探っていきたいと思います。

通販広告自習室Vol.1

広告で、いかに優れた接客ができるか。
通販のチラシに求められる役割です。

これを言っておけば間違いなく人が動く。流通広告には法則があった。

 つい最近まで、流通の広告には「このどれかを言えば間違いない」という3つのメッセージポイントがありました。その1は、家電から食品まで、良い品がこんなにいっぱい揃っています、という「品揃え」をアピールすること。その2は、いま必要な商品が、もうこんなに安い!など、「価格」を訴求すること。そしてその3、いままでこんなのなかったでしょう。と新しい価値観を提示して「生活提案」をすることです。しかし、これらのメッセージは、ものを売るための器、つまり百貨店や大手スーパーなどの大きな店舗があってこそ成り立ちます。ご存知の通り、百貨店もスーパーも再編中。メーカーが費用対効果を最大限に求め、コミュニケーションの効率を求めるいま、自前で販売まで行うことは、自然の流れなのです。

ターゲットに一番近いコミュニケーション手段、それが折込チラシ。

 1ヵ月分、積んでみると約3cm。それが名古屋市内で中日新聞を購読していたら目にする通販のチラシの量です。その業種はスキンケア、ヘアケア、健康食品を含んだヘルスケアが大半、家電や雑誌などが少々。圧倒的に、カラダ、もしくはカラダの一部をなんとかする!という商品が並んでいます。対象は40代以上、シルバー中心。じっくり読むと、どれも一つのメッセージを伝えていることに気がつきます。「ちょっと不安で自信がないあなたを、誰にもわからず改善します」というもの。競い合うように、効果を声高に語っています。これらを伝えるためには、インターネットも手としてはあるし、どの企業もホームページから購入することは可能です。が、50代の女性がパソコンでホームページなどを閲覧する時間は、1日に約26分。これは20代の女性の36%。60代になると21%に下がるそうです。チラシがまだまだ効果を発揮する世代であることがわかります。

通販チラシ
チラシで買う気にさせるためには、強力なポイントが必要になる。
例えば商品特性を探ると───。

 さて、一つを例に挙げて、通販チラシの特性を見てみましょう。ピックアップしたのは「天然利尻昆布」のヘアカラートリートメント。福岡市にある株式会社ピュールが製造販売している白髪用ヘアケア商品です。なぜこれを?僕自身がユーザーだからです。ただし、積極的なユーザーではなく、たまたまウチのお風呂にこの商品が並んでいたから。妻が生協を通じて購入したようです。
 チラシの読者は、まず「ホントか」という疑心暗鬼で読むことを想定しておかなければなりません。その上で、「ホントだよ」という事実を一つずつ提示し、最終的にはお電話、またはハガキで申し込み、というステップに持ち込む必要があります。そこで、読者をその気にさせるために、とっておきの武器を使う必要があるのです。

ポイント①
自然・天然
化学ではなく、合成ではなく、人工でもなく、天然由来のものであるということ。商品名に「利尻昆布」と入っているこの商品は、まずクリア。それだけで黒々とした髪を連想させるのは強い効果があります。チラシにも「天然利尻昆布エキスなど28種類の植物成分を配合」と書かれ、詳しくは分からないが、きっと大丈夫!という意識になります(ちなみに、僕が使ってみようという気になったのも、このパッケージに書かれた「利尻昆布」とう言葉でした)。
ポイント②
価格
人間の心理は全く不思議で、安ければ買う、というものでもないことは、自分を振り返ってもわかります。ある程度の値段じゃないと効く気がしない。でも高すぎたら買う気にならない。そのあたりのボーダーは、僕の場合3,000円。この商品は税込3,150円。ぎりぎりOKラインです。リ・アップをある程度続けたのですが、途中でめげたのも費用対効果の関係でした。
ポイント③
効果・結果
これはリピーターでない限り、信用する根拠が何もありません。いくら「白髪をキレイに!!」と言われても、使ってみないと分からない。他の商品でも、「痩せる」「生える」「シワが消える」はたまた、「財布を変えるとお金が貯まる」と言われたら言われるだけ「ウソでしょ」と思えてくるのは僕だけではないはずです。判断材料がない限り、言葉だけでここに注力することはムダなのではないか。むしろ逆効果、と思うわけです。また、ここでやっかいなのは写真。Before、Afterで掲載されている、あの写真たちです。「痩せる」商品で掲載されている写真は、プロが見たら明らかに合成だろう、というのを良く目にします。そして、読者もそれを感じています。でも、もちろん本物もあるわけで、そこらあたりの判断を読者が出来るかどうか、です。「天然利尻昆布」のヘアカラートリートメントのチラシでも、効果をアピールするために裏面の半分を使っています。使用者のコメント、写真、カラー見本を兼ねた使用前・使用後の写真などなど。見る限り、読む限り、他社の表現よりはトーンが抑えられ、好感は持てますが。
買う気にさせる5つのポイント
お客さまが買う理由、それは商品特性以外でもつくることが出来る。

ここまでが商品そのものが持っているポイントです。ここからは、商品をより強く武装するためのポイント。

ポイント④
評判
客観的な事実として、楽天市場のランキングなどはよく目にします。たくさんの人が使っていることは、確かに商品の良さを表すバロメーターになります。過激すぎるキャッチフレーズでその良さを語るより、事実の方が強い。「天然利尻昆布」のヘアカラートリートメントの楽天市場第1位というデータは、初めての方でも安心して購入できる素材になると思います。
ポイント⑤
企業努力
どれだけお客さまにサービスできるかという姿勢です。満足できなかったら返品可能か。まとめ買いするとどれだけお得か。送料はどれだけ買ったら無料になるのか。初めての購入者に特典はあるのか。注文の電話はフリーダイヤルか。だいたい、チラシは老眼でも読める文字サイズか。細かなことこそカスタマーファーストのマインドが現れます。この商品の製造販売元のホームページを見てみると、自社に販促企画部門が整っていて、組織としても女性の代表者の気配りが届いている様子。チラシには、様々なサービスが網羅されていました。そして最後の武器は、結局はそれか、と思われそうですがテレビCMを流していること。いや、「テレビでCMをやっている」とチラシで言えること。CMを流すことは、会社や商品や代表者の顔などの認知度を一気にアップするためには一番の媒体です。そして、流れていないときにもCMは大きな仕事をしています。「テレビでもCMをやっている利尻昆布のヘアカラートリートメントです」という営業トークが言えたり、書けたりすることは、販売促進の強力な後方支援になっていることが想像できます。
私に充分尽くしてくれたら、買ってもいい。というお客さまが増えている。

 現在の通販チラシと、かつての流通広告と明らかに違うこと、それは相手にする人の数です。全国の新聞に広告を掲載すれば、千万人単位での話になります。店舗にはあらゆる世代の人々がやって来ます。文字通りマス(大衆)を相手にしていたわけですから、広くコミュニケーションする必要があったのです。いまはどうか。極端に言うと、「来週同窓会があるあなたに、良いヘアカラーがあることをお知らせします」という一人へのコミュニケーションが効く時代。企業はより具体的に物を提示し、受け手はより具体的にメリットを実感しないと、人は買い物をなかなかしないという状況は、「私にどれだけ尽くしてくれるか」という判断基準を生み出しました。広告は、品揃えを伝えるのではなく、価格だけを伝えるのでもなく、ましてや生活提案という大きなことを提示するのでもなく、1枚のチラシで、いかにきめ細かく接客できるかという戦いをしているのです。

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