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いまの広告の傾向は、どうなんだろう。
これからの広告は、どっちを向いていくんだろう。

そんな大きなテーマを念頭に置きながら、連日新聞に折り込まれてくる流通関係のチラシ、中でも通信販売のチラシをじっくりと見てみました。
ものを売る。それ自体非常に難しくなっている理由として、想定ターゲットは見えていても、そのお客さまをどう探したらいいのかが分からない、という声をよく聞きます。逆に言えば、お客さま自身に飛び込んできていただける入口があれば、もっと売ることが出来る、業績を伸ばせる。そんな、超優秀営業マンの代わりになる方法の一つに、通販チラシがあると目を付けました。どうすればお客さまを購入まで誘導できるのか、CPI(一人の見込み客を見つけるために必要な経費/Cost Per Inquiry)、CPO(一つの注文を得るまでの販売コスト/Cost Per Order)を抑えながら、最大の効果を発揮するためにはどうすればいいのか。費用対効果をさらに高めるチラシのヒントを、実際のチラシを例に挙げながら探っていきたいと思います。

通販広告自習室Vol.2


通販チラシ

1枚のチラシが、
正のスパイラルへと導いていく。
そのお手本が、ここにあります。

今トレンドの企業活動を、チラシを通して観察してみる。

 良い商品であれば、売れる条件はそれだけで整う。良いサービスであれば、ウケる可能性が高い。当たり前のことですが、企業活動の成果を世に問う上で、成果自体の善し悪しは売れ行きの最も重要な位置を占めます。が、それを世の中に伝える手段がしっかりしていないと、広がることはなく、役目を終えてしまう商品やサービスだってもちろんあります。今回は、活動内容や、そこから生まれる商品・サービスが確かなものである企業が、どんな広告展開を行っているか、それを考えてみたいと思います。


 冒頭に言った良い商品、良いサービスとは何なのか。東日本大震災以降、暮らしのモノサシが大きく変わったと言われ、「安全性」と「弱者の味方」というキーワードが視線を集めています。安全性とは、ご承知の通り放射能汚染からいかに食品を守るか、ということ。もちろん、以前から農薬や遺伝子組み換えなどが注目を集めてはいましたが、大震災がだめ押しをしたようです。また、「弱者の味方」とは、簡単には出かけられない高齢者をアシストするサービス、さらには働くミセスや単身者など、時間が足りない、自由に使えないなどという方をサポートするサービスを提供すること。あなたに代わって○○○します、という企業活動です。今回取り上げたのは、この2つのキーワードにしっかり応え、活動がジワっと支持を得て広がっている「らでぃっしゅぼーや株式会社」のチラシです。

広告で伝えるのは、他と違うポイント。その素材となる情報は3つある。

 まずは企業内容・活動を見てみましょう。特徴をたどっていくと、3つに大別されそうです。第1番目は、販売している商品と販売方法。商品は野菜やその加工品を含めた食品です。販売方法は、旬の野菜おまかせセット「ぱれっと」というパッケージ商品(野菜を週1回、定期的に宅配する商品。家族の人数等に応じて39種類のラインナップから選べる)と、注文カタログ「元気くん」から自由に選択して購入する2タイプがあり、いずれも一戸一戸宅配をしてくれます。重いものを持たなくて済む。買い物に行く時間がなくても、玄関先に置いといてくれる。弱者の味方のスタンスをきちんと守っています。
 特徴の2番目は事業に取り組む姿勢で、それが最もよく現れているのが商品自体。有機・低農薬野菜、無添加食品にこだわり、徹底的に安全性を求めたモノだけを流通させます。そのこだわりはパッケージの素材やデザインにまで貫かれ、環境負荷を抑える努力を垣間見ることが出来ます。
 そして第3番目の特徴は、カスタマーサービス。ホームページを見ると放射性物質検査の結果やレシピ、野菜や果物、食品添加物に関するミニ知識など、多くの情報を得ることが出来ます。
 こうした「食に関する超優等生」が自己紹介する上で、どんなチラシが望ましく、購入者となっていただくためには何が必要なのか。実際のチラシを見てみましょう。

3つのチェックポイント
ポイント①
事実を
伝える
事実をきちんと伝えているか。最初のチェックポイント。
 らでぃっしゅぼーやに限らず、広告、特にチラシで必要なのは、伝えたいことを端的に、わかりやすく、具体的に紹介すること。企業がどんな考えで、誰のために、何を、どうするのか、を読み手全員に伝えることが、役割として与えられているのですから当然です。その場合、問題となるのは言いたいことを全て言えばわかってもらえるか、ということ。答えはNO!広告とは、基本的に引き算でつくっていくものです。あれもこれも紙面の中で言いたい、と言う気持ちはこの際捨てて、メインのメッセージを一つ決める。あとは、それを付加する情報だけを掲載する。それですべてにしないと、読み手のキャパシティを超えてしまいます。らでぃっしゅぼーやのチラシでまず注目したのは表面のメッセージ。この企業の最も特徴的なことは、その商品内容にあるはずですが、キャッチフレーズで言っているのは宅配の内容。ボディコピーまで読んでいくと、「足腰の悪い方や、小さなお子さまのいるご家庭では、買い物に出かけることさえままならないものです。」と語り、弱者の味方であることを伝えようとしています。きっと扱っている食品を語ったチラシもあるとは思いますが、役割分担して、今回は誰に対してのサービスかだけを明確に言おう、という潔さがメッセージの伝わるスピードを速くしています。
ポイント②
膨大な情報を整理し伝える
膨大な情報をいかに整理して伝えるか。2番目のチェックポイント。
 一番の特徴である商品、さらに商品に込めた思いはどう伝えているか。その答えは裏面にありました。ホームページでは何ページにもわたって語られている内容、それらをすべて伝えるスペースは当然ありません。いかに端折るか。いかに端的に言い換えるか。それでいてしっかりメッセージは伝えるか。この整理テクニックの上手・下手で、読み手の心を動かせるか、否かが決まります。らでぃっしゅぼーやの場合、このパートで伝えたいことは二つ。一つは、こだわりの野菜をパッケージ商品として販売していること。もう一つは、安全な加工品をカタログ販売していること。コピーの構成力で伝えるべき情報を選択し、それぞれを文字数にして70字程度のコピーブロック4つで見事に言い得ています。また、目線を迷わせないレイアウトと色づかいは、デザイナーがどれだけ読み手のことを考えているかの表れ。A4サイズ1ページ分のスペースをしっかりとまとめ上げています。
ポイント③
目線と心をナビゲート
目線と心をナビゲートしていくこと。3番目のチェックポイント。
 さて、情報を手にしたら、サービスの利用や購入へと読み手をナビゲートするアイデアや演出が必要になります。その代表例がプレゼント。「いまなら」という限定感とお得感を感じさせる、いわゆる実弾です。らでぃっしゅぼーやは、3段階で用意しています。まず、資料請求で「濃い野菜セット」をプレゼント。これはトライアルの意味もあり効果的。続いて、商品代金のみで「お試し宅配」を8週間体験。このポイントは8週間という期間の長さで、これくらい続けると「やめたら困る」ものとして家庭に定着してしまいます。そして、締めは正式入会で5,000円分のポイント進呈。前回のこの欄でお話しした「自分にどれだけ尽くしてくれるか」が利用・購入のポイント、というモノサシで考えると、かなり手厚く尽くしてくれていると思います。
サービス利用まで導けたら、正のスパイラルに乗っていく。

 らでぃっしゅぼーやに類するサービスには、ご存知の生協があります。カタログを通じてほしいものを注文し、宅配してくれる。こうしたサービスをいったん利用したら、先ほどの「お試し宅配8週間」と同じように習慣化し、なかなか止めないという特徴があります。しかも、商品の価格帯はそれほど安いというわけでなく、むしろ安全性維持に傾ける努力に付加価値を見出し、少し高いことで購入者も社会参加しているという気分にもなります。まさに正のスパイラルが成立する業態の広告、その好例がここにあります。

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