トリテク~スマホで広告動画を撮るための基礎知識&ちょっとしたテクニック VOL.11 グリーンバック撮影にチャレンジしてみよう

2023.05.16

広告動画をスマホで撮影するちょっとしたテクニック。 今回は「グリーンバック撮影にチャレンジしてみよう」です。

グリーンバック撮影をご存知でしょうか。
一番知られているのはテレビの天気予報ですね。 アナウンサーが気象予報図の前で話しているように見える天気予報を見た事があると思います。 あれは気象予報図の前に立っているのではなく、グリーンバックの前に立ちそこに気象予報図を合成しているの です。
最近では YouTube の配信で利用している方もいますし、Zoom などのリモート会議システムでも「バーチャル 背景」などの名称で背景を変える機能があるので、ご存知の方も多いと思います。 グリーンバックを使えば通常より綺麗に「バーチャル背景」を設定できるようになっていますね。

クロマキー撮影と呼ばれる事もあるこの撮影方法。 人の肌の色と色相が反対であるグリーンやブルーを背景にして撮影し、そのグリーンやブルーの部分(背景)を 透明にして別の背景をはめこむという方法です。 「色相?」「背景を透明?」と、首を傾げる方もいるかもしれませんが、難しい事は考えなくて大丈夫です。 簡単に言うと、「背景をグリーンにしたら、背景をいろいろチェンジできる」という事です。

まずは、こちらの動画をご覧ください。

グリーンの背景の前でプレゼンテーションをしている男性の動画です。 こちらを編集すると、このような動画を作る事ができます。

いかがでしょうか。 プレゼンテーション用の背景を作り、男性の動きに合わせてグラフを出したりメッセージを動かしたりする事が できます。 応用すれば、プレゼンテーションだけではなくセミナーや教育関係、そして商品紹介などの広告にも使えますね。 アイデア次第でいろんな事ができそうです。

では最初に、グリーンバック撮影のメリットとデメリットを紹介します。 まずメリットは、綺麗なスタジオや撮影地に行かなくても、スタジオや綺麗な部屋や公園にいるような動画を作れる事です。

スタジオやレンタルルームに行く手間や料金を考えると、大きなメリットですね。 そしてデメリットは、グリーンバックのセッティングの手間がかかる事、撮影にコツが必要な事、そして必ず綺 麗な合成ができるとは限らない事です。 セッティングや撮影のコツについては後述しますので、ここでは合成がうまくいかない場合についてお話します。 最初に紹介したプレゼンテーション動画のような背景にグラフィックを使ったものならいいですが、2つ目の動 画のように現実の部屋や風景の写真や動画を合成する場合、欲しい背景素材が手に入らない事があります。

「豪華なシャンデリアのある部屋にいるような合成をしたい」とか「綺麗なビーチにいるような合成をしたい」 と思った時、そういう背景素材はいくらでもありそうですが、撮影した人物のアングルにピッタリ合うものは案外みつかりません。 綺麗なビーチの動画素材を探しても、人が写っているものや遠景や空撮の素材しかみつからない…なんて事があるのです。 結果的に不自然な合成になって、そのせいで「いかにも合成しました」という動画になり、逆にチープに見えて しまいます。 動画編集者に編集を依頼する場合でも、グリーンバックでどういう背景と合成をしたいか、そういう背景素材が あるかどうかをご相談していただけるとよいと思います。

さて、メリットとデメリットを理解していただいた上で、その撮影方法やコツをご紹介します。 グリーンバックはこのようなグリーンの布や紙を設置して撮影します。

グリーンバックの機材は、カメラの照明などの撮影用品を売っている店舗で買う事ができます。 紙製と布製があり、それぞれメリットとデメリットがあります。
紙製のメリット:シワができない・丸めて保管できる・汚れたり破れたりしたら切って廃棄できる
紙製のデメリット:大きいサイズだと重い・吊るすスタンドが必要
布製のメリット:軽い・丈夫・壁や天井にガムテープでとめてセッティングできる
布製のデメリット:シワができると合成がうまくいかない
紙製と布製とどちらも一長一短ですが、撮影したい大きさやセッティングする場所に合わせて選んでいただける とよいと思います。

他に、グリーンバック撮影では撮影用ライトを最低でも2つ用意してください。 左右からライトをあてて、グリーンバックに人物の影ができないように、そしてグリーンバック背景の明るさが できるだけ均一になるようにしてください。 もっと手間をかけるなら、グリーンバックだけを照らすライトを左右に2つと人物を照らすライトを2つの合計4つのライトを用意できれば完璧です。 グリーンバックはシワがないようにセットし、撮影したい人物の大きさより広くセットしてください。 足元も映す場合は床までグリーンバックを敷かなければなりません。

次にカメラについてです。
まず、カメラは必ず三脚で固定してください。 カメラが動いてしまうと、背景が固定されているのに人物がグラグラ動くというおかしな動画になってしまいま す。
次に、絞り(f 値)を大きくして被写界深度を深くしてください。 スマホの場合は背景ぼかしの機能を切ってください。 これは、人物の輪郭がボケているとうまく切り取ることができないからです。 また、解像度は一番高いものにしてください。
シャッタースピードも高くセットしてください。 人物が動いた時のブレが少なくなり、綺麗に切り抜く事ができます。

そして、撮影される人物(モデル)についてです。

撮影されるモデルは、服やアクセサリーにグリーンの部分がないようにしてください。 編集する時にその部分が透明になってしまいます。 また、左右に動いたり手を伸ばしたりした時に、グリーンバックからはみ出さないようにしてください。 モデルがはみ出していないか、撮影中はカメラから見てチェックしてください。 撮影前にモデルの動きをチェックするのも良いでしょう。
更に、前後にもあまり移動しないでください。 あまり手前に来ると被写体がボケてしまい、また自動で被写体にピントが合うと背景がボケてしまいます。

グリーンバックのセッティング、ライトとカメラのセッティングなど結構難しそうですね。 動画編集者にグリーンバック撮影した素材の編集を依頼したい場合は、一度テスト撮影をして見てもらうのもい いと思います。 一度理想のセッティングを決めてしまえば、次回からも同じセッティングをすればよいだけです。 店内や社内での撮影で、スタジオや色んな場所で撮影したような動画を作成できるのは、広告動画やプレゼンテ ーション動画を作るのに大きなメリットとなります。 いくつか動画を作った後、新しいパターンの動画を作りたい方。ぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。