この広告に注目!VOL.1愛知県の観光PR動画を観たことがありますか?

コピーライター KEN
2022.08.16

制作したのは、スタジオジブリ?!

コピーライターやデザイナー、プランナー、動画クリエーターなどなど、広告を制作する人たちが一度は経験するんじゃないか、というものに自治体が行う観光キャンペーンのプロポーザル、つまり競合コンペがあります。

都道府県や市の観光動画をつくれるなんて、良いじゃない?やりがいがあるんじゃない?と思うのですが、毎年このコンペに参加すると、ネタが尽きます。何をテーマに、どんな演出で、誰を起用して地域の魅力を紹介するか。見せたい観光地や紹介したい産業などが変わらないのだから、アイデアを絞り出すしかないという、辛い数週間が待っているのです。

なぜこんなボヤキから始めたかというと、愛知県が制作した観光動画を目にしたから。つくったのは、あのスタジオジブリです。 なぜ、スタジオジブリが愛知県の動画を?と思っているあなたへ。私のように愛知県在住の人々ならみんな知ってる、ジブリパークが愛知県長久手市に2022年11月に開園する、という事実が一番の理由です。観光動画がその予告の役割も果たしてくれるなんて、ものすごく大きな広告効果だと思いませんか。この企画がこれまでと同じように競合コンペで勝ち抜いたものなら、スタジオジブリを起用するプランを持ち込み、実現させた広告会社の力を讃えます。

タイトルは「風になって、遊ぼう」。

動画の内容はこうです。

森の中で、旅人が残した鞄から、羽根の版画を見つけた少女。その脇を「風」が飛び去っていく。
少女は、その「風」を追うままに、愛知県内各地を駆けぬけ、「サツキとメイの家」で、羽根を見つける……。羽根を運ぶ風になって駆ける、少女の冒険物語。(愛知県観光動画「風になって、遊ぼう」特設サイトより)

スタジオジブリと言えばアニメ、となるのですが、この動画は実写。ただし、愛知県の自然の中や街の小道、都市やお城を走り抜ける様子は、まさにスタジオジブリのアニメを見ているかのようなシーンの連続です。これは、宮崎監督がアニメをつくるならこんな場所を舞台にする、という前提でロケハンを何度も行い、場所やカメラアングルを決めたのではないかとさえ思います。

「らしさ」をさらにプラスしているのが音楽。フルオーケストラが、これまでのジブリ作品で聴いたことがあるようだけど新しい、そんな旋律を演奏しています。

観光動画として、予定調和の場所紹介ではなく、日本有数のコンテンツ制作組織の視点で描いたからこそ、愛知県のPR効果、スタジオジブリの力の再確認、そしてジブリパークへの期待感醸成というwin-winの成果が生まれたのだと思います。その内容と効果を実感するために、ぜひご覧ください。そして、観光地としてはなかなか人気が上がらない愛知県を、一度訪れてみてください。動画のイメージとズレがない、良いところですよ。

日本有数のコンテンツ制作組織であるスタジオジブリと愛知県のwin-winの関係

だいたいは自治体のサイトに企画募集の情報がアップされ、参加社が集まる合同オリエンテーションがあり、指定された日までに企画、媒体展開、スケジュール、そして予算などをまとめた企画書を提出します。で、1次審査となる書類審査に通ったら、対面でのプレゼンテーションを行い、1社が決定、となるのです。

私たちがこうした情報に接したとき、まず考えるのはその内容ではなく、広告会社が提案した企画か、それとも愛知県がスタジオジブリへ単独発注をしたのか、など決定までの裏側です。が、ここではどうでもいいことなので、話を進めます。

<「風になって、遊ぼう。」特設サイト>

https://www.aichi-now.jp/kaze/