この広告に注目!VOL.7キムタクは、本当にオワコンなのか。
最近、キムタクの露出が目立つのはなぜ。
「商品やサービスがとても良い」ということを、いかにして狙い通りに伝えられるか。広告でこの課題を解決するにはタレントのチカラも有効、という話を以前しました。その場合、重要なのは誰が薦める?ということ。基本的にはタレントと広告するものとのマッチングを重視します。
では問題。次の広告(CM)は、誰がイメージキャラクターとして登場しているでしょうか。
リクルートのタウンワーク、マクドナルド、日産、スポーツくじのWINNER、オープンハウス。
はい、ご存知の通り、木村拓哉です。
2022年11月6日、岐阜市で大事件が起こりました。岐阜市民の人口を上回る46万人が全国から集結。自身が主演する映画「THE LEGEND & BUTTERFLY」のPRで、地元の祭りに木村拓哉がやって来てパレードをしたのです。その経済効果は39億円だそうです。何より大きかったのは、この事実を東海3県のみならず、全国ネットのワイドショーが報道したこと。SMAPの解散以来マイナスのイメージが強かったのですが、タレントとしてのチカラが再認識され、日本中が「やっぱりキムタクはすごい」という空気になりました。
数多く出演しているCMで、キムタクが果たす役割とは。
CMの話に戻ります。先程挙げたCMの中で、木村拓哉のキャラクターにぴったり、木村拓哉しかダメだ、というのはいくつあるでしょうか。タウンワークは芦田愛斗との掛け合いがポイントなので、芸人でもいけそう。マクドナルドのデキるビジネスマンは、小栗旬が似合いそう。日産は福山雅治、オープンハウスのモグラは大泉洋に、といろいろなタレントの顔が見えてきます。
これらのCMに出ている木村拓哉の役割は、商品やサービス、ターゲットとのマッチングというより、「元SMAPで、サーフィンをしていて、男気が強くて、50歳とは思えないスタイルとルックスで、かっこよすぎる木村拓哉」という自身の価値を最大限に発揮すること。スポンサー目線で言えば、こんなにすごいキムタクをCMに使っている、もしくはキムタクにこんなことをさせているという姿を、見ている人に伝えて、物やサービス、さらには企業自身のポジションアップにつなげているような気がします。
タレントありき、の広告づくりは、オワコンではない証。
広告にタレントを起用する際、通常はプレゼンテーション段階で数人を提案し、広告主と協議をして決定します。候補者のセレクトは、キャスティングを専門に行う会社が担うことが多く、広告主や広告会社の意向、広告のターゲットや企画内容を考慮して挙げていきます。もちろんギャランティーも大きな要素。3カ月間を1クールとして、何クール使用するか。使用する媒体は何か。エリアは全国か、ローカルか。こうしたさまざまな要素がすべて金額に反映し、では●●●●万円、というように決められていきます。
もう一つ、タレントが決まるステップとして、広告主から「あの人にお願いしたい」という要望が出てくるケースもあります。いわゆる「タレントありき」という広告のつくり方。このコラムを読んでいる方は年代的に分からないと思いますが、例えば石原裕次郎、美空ひばり、高倉健など、昭和の大スターがCM出演をする場合は、きっとこれではなかったかと思います。
あくまでも想像ですが、木村拓哉もこの域に達しているのではないでしょうか。キムタクありきで考えると、「いつも2枚目だから、土の中から出てくるモグラにしちゃおう」という生かし方も分かります。
オワコンにならないチカラは、いつまで続くのか。松潤は後に続く器なのか。そんなことを考えながら、CMを見るのも楽しそうですよ。