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おまけ

おまけのひとり言(冬)

雪が降った。何年振りだろうか。丹精を込めた
禅隆寺さんの庭に雪が積もる。雪月花の世界・・・。
酒でも一献。だが、そんな気分にはなれない。

紅葉が終わり、日差しが変わる。落ち葉が風に舞う。
木々が冬篭りに入る。やせて枯れて寂しそう。
11月、師走そして大晦日。新年を迎える。
1月15日は成人の日だ。寂しさの中にも、
活気や希望や華やかさがある。

だが、禅隆寺さんの桜と紅葉の木は
風に吹かれて黙ったまま・・・。

1月20日ごろ大寒。ここからが好きな季節だ。
啓蟄、春分の日までがとてもいい。何度も訪ねる。
桜と紅葉の木の下に立ってみる。上を見上げるとどんよりとしたくすんだ青。木の肌に手を当ててみる。
ざらざら、ごつごつしている。

「そろそろだね。今年はどうだい・・・」
「そうね。これからの陽の当たり具合かな。
強めのピンクでいこうかしら今年は・・・」
「あんたは・・・」
「分かっているじゃない。
一気に冷え込んでくれればいいのよ」
「つめたくされると弱いの・・・今年も真っ赤になるわ」

例年1月20日頃から、2月末まではちょっぴり気が抜ける。
寂しい。侘びしい。ひとりぼっち。
どこにいってしまったのだろう。いつもワンワンと歓迎してくれるワンチャンもいない。
背中を丸め首を縮め、ポケットに手を突っ込む。
気がつくと手を口元にあて「ふーっ」と息を吹きかけている。
風の音が聞こえないか、耳をすます。寂寞感。
日暮れ時。桜色、緑、赤・・・何もない。色のない世界。

消防車のけたたましいサイレンの音が門前を通り抜ける。

このころから光の角度と強さが変りはじめる。
注意深く観察していると、少しずつ芽が吹きはじめる。
庭の風景が変わっていく。
運がいいとウグイスに会える。
そんな年は仕事もうまくいく。
気がつくと、禅隆寺さんの庭は、
新鮮な緑で見違えるようになる。
きれいなようで都会の空気は汚れている。
この世に出たばかりの葉の緑・・・。
そして太陽の光。美しい。

小社には写真の漢詩が額に入れて飾ってある。創業時から飾ってあるそうだ。

牡丹は中国では「百花王」「花王」「花神」「花中の王」「百花の王」などといわれ花の王様。「苔」はあの「苔」である。

牡丹餅(ぼたもち)が大好きだ。歯が緑色に染まるぐらい濃く、渋く、にがい、あつ~いお茶をいっしょに楽しむ。
春分の日、お彼岸だ。

【2106】

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